オフクロさんは今日、東京の病院へ定期検査に行ってきた。
俺が家に帰ると水炊きを親父とつついていた。
今日の、体の芯まで痺れる程の寒さで縮み上がっていた俺は、大喜びで食卓に飛び付き、味ぽん片手にガツガツと頂いておりました。
すると、オフクロ曰く
「東京の人はみんな白い傘をさしているけど、アレ流行ってんのか?」
「……? あぁ、ちがぁーよ。そんな訳ねぇだろ」
「……使い捨てか」
俺、考えた事もなかったけども、きっとオフクロには異様な光景だったのだろう。
冷たい雪が振る中を、無数の道行く人が手にするビニール傘がね。
俺の記憶ぢゃ確か湯島辺りの病院へ行っているはずだから、聖橋を行き来してるビニール傘の群衆に「東京」を感じたんだな。
「あんた、今日この天気で仕事したの?」
「あぁ、うん。」
「合羽着てか?」
「合羽着てだよ。当たり前ぢゃん!」
「寒かろ?」
「そりゃ、寒いけぇが、安い合羽着てねぇから大丈夫だよ」
「……ふ〜ん。お父さんも高い合羽使ってんの?」
「俺が山で使ってんのは二万だよ!」
「二万! そんなにすんの?」
「俺のは安い方だよ! みんな、もっと高いの着てるさ。だから馬鹿にされるよ『山に来るなら、もっと高いの着て来ないと駄目だよ』って」
「もっと高いのって幾らすんの?」
「五万位だな。」
「ごぉーまぁーん!?」(母&息子)
鍋を囲みながら、田舎と都会の雨天は一粒の単価が違う事を知った日であった。
休みの前日はなんだかんだと明日の予定を考えて、期待で胸踊らせながら床に入るのだが、いざ休日当日になるとダラダラと時間を食い潰して一日が終わってゆくのであった。
今日も正にそんな休日。
実のある行動としては平日休みを利用しての通院位だな。
そして、読書。
斜め読みが得意な割りには手隙の時間に少し読むと云うのが苦手な俺は、読み疲れするまで読む事が可能な休日は大きい。
普段の労働の後では10ページも読まない内に夢うつつの鼻ちょうちんである。
そして、いざ「読むぞ!」と云う時は煙草とコーヒーだけあれば良い。食事を挟むと巧く気のシフトが出来なくなるから。
後はダラダラと、ダラダラとページを繰るだけ。
弱った事に読み進めていたら佳境に突入してしまい、今週はこれで終わってしまいそうだ。
消化したいアルバムが5〜6枚あるけれど、面倒だから休聴日週間で読破する。
幾ら年令を重ねても、時間を上手く使う事が出来ない。
いや、寧ろ年令を重ねてゆく程に時間に負けている様な気がする。
ちくしょー! 負けねえぞ!
俺は生粋の昭和のオタクだぞ! 蟹野郎!
お金はいらないので、時間を下さい。
でも、お金も少し下さい。
休日はもっと下さい。

年末に預けたギターは未だかえってこない。
余程傷みが激しいのだろうか? それとも忘れてしまったのか? 何れにせよ待つしかない。
ただ、ただ待つしかありません。
きっと手元にかえって来た時は良い音がすんだろなぁ。
あのオッチャンは職人だもの。
その音色を想像しながら毎日毎日妄想し、あんなことや、こんなことを頭の中でシュミレート。
そのお陰で、ほぼ出したい音のイメージは固まっている。
そして、それはいとも簡単に飛び出してしまうような気がする。
そんな期待感で胸一杯の俺なのだが……なぜか、一週間に一度位の割りで不吉な夢を見てしまうのだな。
ギターが真っ二つに割れてしまったり、ネックが有り得ない程に捻曲がってしまったり、と……不吉だ……。
「良い音」と云うものは定義のしようが無いと思うのだけども、最近「良い音」について色々と考えてみる事が多い。
例えばアナログレコードとCDの音質の差。
CDと云うソフトが出回る様になって早二十年以上経つが、CDが出た当初は「やっぱりアナログ!」と云う意見をよく耳にした。
それも凡そオーディオマニアなんかぢゃない、友人レベルでの会話でだ。
俺は元来、細かい感触に疎い人間なので「そうかなぁ〜?」と半信半疑だったが、ある日マニアの方にオリジナル・アナログを聴かせて貰ったら、その音の素晴らしさに愕然とした記憶は今も生々しい。
ワイドレンジが売りのCDよりも、二百倍のLIVE感がスピーカーから飛び出してきたからなぁ。あれにはまいった。
それ以来CDを買うのが馬鹿馬鹿しくてアナログばかり中古で入手していたが、ここ最近のCDは見違える程に音質が向上している。
いや、見違えると云うよりも、まるで別物だな。それはもう「コンパクト・ディスク」と云う一つのジャンル、一つの選択肢を確立したと言えるだろう。
兎に角、今のCDは俺が良い。
そりゃオリジナル・アナログを抜群のオーディオ機器で聴けたら一番最高なんだろうけれど、そんな経済環境や生活環境が程遠い俺には、CDで取り敢えず十分です。
しかし、別の疑問も残る。CDの収録時間はアナログよりも大幅に長い。それを利点としてボーナストラックなるオマケがつく事が多々見受けられる点だな。
お得感はあるけれど、同時に安売り感もある。
ま、そこはストップボタンを押せば済む事なんだけど、A面が終わってB面に引っ繰り返し「あぁ、最高……」で終わる美しさもなくなり、尚且つ本当に必要なのかどうかも分からない曲がダラダラと続いてゆくのは時に苦痛でもある。
一番の理想は別ディスクにしてくれりゃ良いんだよなぁ。
THE BEATLESのCapitol盤みたいにモノラル/ステレオ同時収録はありだな。これは真の意味で一粒で二度おいしい。
だから、マニア向けの物はマニアだけに売れば良いんだよな。ピンキリだとは思うけども、ソフトとしても、作品としても、聴き辛くなっている感があるもの。
それ故にネットでばら売りしてる方が商売になっているんぢゃねえかなぁ。
俺はなんだかんだ言いながらも喜んで聴くけどね、ボーナストラックまで。オタクだから。
それでも、決してオリジナル・アルバムにはボーナストラックを収録しない、Bob DylanやTHE BEATLESの方が聴いた後の余韻は大きい。
ま、地球温暖化程の深刻さではないんだけどもね。
今日も電話は鳴らず未解決のままである。
先週はまだ年始気分が尾をひいていたので仕方が無いと思うが、さすがに今週は通常業務だろうに連絡は無い。
面倒なんだな。俺に対して。
確かに彼らの意見はもっともで、取り扱い説明書にも生産終了から八年までは部品を保有するとある。しかしだ、いくら経済大国であるからと言って着せ替え人形が如く「新製品を買いなおせ」と簡単に済ませる前に、約束は守れよ。
俺だって八割位は諦めてるさ。
ただ、あんたらの心意気のなさに腹がたつのよ。
その、規格外は認めないの一点張りは、プロフェッショナルぢゃないね。
ペテンだよ。嘘つきだよ。ぼったくりだよ。
社長が変わって全く別物の会社になったな。
憧れがまた一つ消えた。
――こうして、俺もいよいよ噂のデジタル端末「iPod」なるものに手を伸ばしてしまうのかも知れぬ。
あぁ、夢膨らむわ。
あばよ、SONY神話!
いまや日々の趣味に費やす時間は、生活の殆どを鮮やかに塗り替えてしまった。
一抹の不安はあるが、無理して型に填まるよりも人間らしく暮らせていると思う。
愚行の言い訳と言われればそれまでだが、少なく見積もっても後十年は生きているだろうから、脳みそが働く内に出来るだけ鞭を入れたい。換金のきかぬ財産を胸の内に隠し持つのさ。
世の雲は流れ流れて、勿論、誰しもがハッピーエンドを望んでいるだろうから、切れ間にのぞく陽光はありがたいはず。
俺は見て見ぬふりもしたくない。
いたずらに蜂の巣を突く真似もしたくない。
ただ、ちょっといい風が吹く木立に居て、小粋に口笛鳴らしたい。
2008年現在、凡そのカードは並んでいると思う。
この有り難さを十分に満喫して、尚且つ、今の俺が、今の君に、今起きる全てを洗い浚い映し出したい。
内訳明細は「七つの真実と三つの嘘」の旗の下。
ま、後は運命次第で噂位は耳に届く様になるかもね。
俺は「彼等」を知っている。
さて、今年も残すところ後360日位だな。
ぶっとびます!
そこんとこ世路詩喰!