Stray Cat Blues

俺たちにも明日はある!

Lonely Planet Boy

2007/05/31(木)

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あの娘がお薦めの井上陽水は「夕立」を聴く。

つられて俺はよしだたくろうの「イメージの詩」が聴きたくなる。

「フォークソングは嫌いだ! ダセェから」
そう言い切ったあの人が俺はとても好きだな。
「フォークソングはダセェ」に共感してる訳ぢゃないぜ。

「『夕立』ってカッコ良い曲だよ」
そう言い切ったあの娘がとても好きだな。

その位の事でお気楽極楽で浮き世を渡る穀潰し。
そんな穀潰しは今日も「腹が減っては戦が出来ぬ」と手当たり次第に穀潰す。

お米よ、ありがとう。

お米を、ありがとう。

農家のみなさんに、ありがとう。

そんな具合で世の中成立してんのかと思ってたよ。

何がどうなるとそうなるのか?
歌にもならない闇があり、ご破算に出来ぬ世のしがらみがあり、リアルに感ぢ得ないリアルな死がある。

そして「イメージの詩」だ。

チャンネルはすべて「イメージの詩」を知らないであろう方々が、次から次へとイメージの無い歌を歌ったり、歌わされていたり。
どうやらメッセージがあるらしいんだけど、俺にはパッケージ重視のパッセージ程度にしか映らない。

チャンネルの外の世界ではパッケージにはなっていないが、音楽的ライフランゲージが俺の尻を叩く。

一方では果てない志から志の未来。

もう一方での飽くなき死から死。

どっちもどっちでコソコソやってりゃ糞づまり。

確かに時代はかわるけど、

答えの様なモノは風の中に舞うだけで、目の前に落ちてこない。

JOKERMANやSTREET FIGHTING MAN、NOWHERE MANにMR.TAMBOURINE MAN達は何処に行っちまったんだ。

あぁ、そして、あのLonely Planet Boy。
あいつは馬鹿な奴だった。大臣の様に死んじまった。

ほんとにアホな奴だ。死んじまうなんて。
  1. 山川草木
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Jumpin' Johnny Flash

2007/05/25(金)

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そいつは古めかしいギターケースを持って立っていた。

―――池袋はあんまり好きな街ぢゃないけど、北区だの荒川区だのに住んでるメンバーがいたから、俺は仕方なしに池袋のスタジオで音を出していた。
世の中にはギターを弾く奴が佃煮にして売る程いるが、一緒に音を出して楽しい奴は稀だ。
彼此メンバー募集を見てやって来たギタリストは十人を越えたと思うが、てんで駄目だ。
どいつもこいつも直感にピンとくるものを持っていない。
上手いだけでも駄目。下手っぴ過ぎても駄目。
MUDDYもCHUCKも知らない奴はもっての外。

でも、それはそれ、畑が違うだけの話であって、余所のバンドでなら上手く納まるのかも……よ?

「お前、来た奴にコード進行位は教えてやるとかさ、もっと優しくなれよ!」

中々ギタリストが決まらない事で、他のメンバーも若干疲れが出たらしい。
でもよぉ、俺達が演奏してるのは知らなきゃ終わりってな曲ばかりだぜ!
それで自分のプレーが出来ないなら、それ即ち御免なさいでしょ。
みんな早くステージに立ちたいが、ままならない現状はどこまでも続く様に思われた。

そんな時にそいつは現われた。古めかしいギターケースを携えて。

見るからに変な奴だったが、一緒に演奏をしてみるともっと変な奴だった。
一度曲が始まると、何かの祭りかと云う程にアクションを決めながらギターを弾き出す。しかも動きがカクカクしている。
尚且つ、気味が悪い位に顔全体にいい笑顔が浮かぶ。あたかも「よぉーし、いいぞ! その調子だぜ!」って言う様な雰囲気である。
今日、初めて会ったばかりなのに……。

俺は「変なのがきちゃったなぁ……」なんて思いながら周りを見れば、他の面子もその変なテンションに戸惑いを隠せない。

そして、そのお祭り野郎は曲のエンディングに合わせ開脚ジャンプを決めると、開脚したままで着地を決め、最後の一音を決めた。

……俺達はみんな目が点になった。

「何なんだろう……こいつは……?」

驚くのはまだ早かった。彼は二曲目も、三曲目も、否、その日に演奏した全ての曲のエンディングで開脚ジャンプを決め、開脚したままで着地を決めた。

「あぁ……アホが来ちゃったんだ……」

そして彼は我々のバンドのギタープレイヤーの座を射止めたのだった。
  1. 山川草木
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でも、その引き笑いが良い感ぢ!

2007/05/24(木)


 なるさん曰く、飼い鳩と山鳩は飛び方が全然違うから、飛び方見れば一目瞭然だ。

ほぉーぅ。

 なるさん曰く、松の剪定が一番難しい。ありゃぁ、人間の手で摘んでやるんだぞ。虫にやられなければ三百年か四百年は生きるんべ。

あぁ……そうなんだ。

  なるさん曰く、竹をな、節で伐ってな、片方の節を残してコップの様にすんだよ。そん中に卵を二つ、三つ落として焚き火さほったら、真っ黄っ黄の卵焼きが出来んだよ。竹の油であまーい卵焼きになんだから。うまいぞー。

是非、食べたいねぇ。

 なるさん曰く、土の粘土で何でも洗うと良いよ。昔は頭もこれで洗ったんだから。シャンプー代わりってわけだべ。洗ってみ?

微妙〜ぉ。確かに手はきれいに洗えたけどなぁ……。

 せいじさん曰く、いくら強制撤去でも、お年寄りの年金一人暮らしだったりしたら、そのまんまにしてきますわ。テレビだけが楽しみ言いますもんなぁ。私が黙っといたら分かりませんよ。

やっぱ、あんた最高だわ! 焼肉食べに行こう。

 中原中也曰く、「それを以てそれを現すべからず」って言葉を覚えとけえ

へへへへへ。

 古今亭志ん生曰く、「この一円をあげるからねェ、おまえさんも四人といっしょに帰っておくれ」

はははのは。

まぁ、とは言うものの、その意味不明の引き笑いが良い感ぢだな。
  1. 山川草木
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狭間

2007/05/23(水)

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「わざわざ何事かを書くという労をとるときには、人は、どこかでそれが他の意識によって見られ、認められるであろうという、絶対の期待を抱いているものである。」
――ポール・ボウルズ

かなり乱暴な抜粋でありますが「なるほどな。うんうん」と言わせる一節ぢゃありませんか?

ま、これを前提にしてと云うか、底辺に置いたうえでの俺理論を一節。

俺、「表現者」と云う看板を盾に糞も味噌も一緒にする奴が嫌い。
故になんとなく「表現者」ってコトバも苦手。
仮に「君は表現者なんだね」と他人に指摘されたなら、反射的に全否定します。

俺、音楽そのものが大好き。ロックだろうが、ロックぢゃなかろうがね。

仮に俺が「ミスチルはどうも……」とボヤいたら、それはミスチルが嫌いなんぢゃなくて、ミスチルの音楽が苦手なんだな。

大なり小なり誰しもが胸の内にそう云ったハードルを並べて「Yes」「No」を選択しているとは思うけど……。

その辺が曖昧のままで近寄られても対処に困るがな。

俺は仮に対峙する者が異星人だろうが、その辺がはっきりしていたら敬意をもって付き合うよ。

好きか嫌いはさて置きね。

でも大概は見た目に出てるね、はっきりしている人は。
もしくは二言、三言の発する言葉にも出るね。
まれに意外や意外で一皮剥いたらそうだったなんて方もいるけれど、それは俺の至らない部分に依るところが原因で、そんな時は倍返しで惚れちゃうね。

え〜と、何の話だっけか……?

あぁ、そうだ、最近はなんだか正体不明の輩が多いなと思うんだな。
あくまでも俺の主観ですけども、「こんなもんでしょ?」ってまずは言い訳ありきで行動してる奴が多いような気がするね。

『キース・リチャーズ 彼こそローリング・ストーンズ』を読んだだけでキース・リチャーズに成り済ましちゃう奴とか。

はははのは。

なんだか、いまいち脱線するなぁ。

それが他の意識によって見られ、認められるであろうという、絶対の期待を抱いているはずなのに「私、こんなもんなんです」ぢゃぁ駄目でしょう。

「好き」である事に誠実であるべきなのに、「好き」度数の上限設定を自ら低めにしてアレもコレもと手広く食す。
そんでもってそんな人達同士の輪で容認し合う事で世界平和が訪れるみたいなさぁ、奇妙な村社会が散在してんだな。

これをどうにか耕さないとならない様な気もするけど、それは俺の仕事ぢゃない気もするし……。

しかし、その真逆で動いてゆく流れもあるはずだしなぁ、単純にその川が何処にあるのか知ってる奴と出会ってないだけなのかも。

なんせ、今、此処、でやりたい!

そう思う自分の衝動の理由はアンチ・ロックと云う名のロックンロールなんだけどね。
  1. 山川草木
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流れてゆく雲が如く漂ってるだけ

2007/05/20(日)

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「考えるな!」と言い聞かせるが、そう簡単に空っぽにはならねえなぁ。

この不自然さはどうにもならねえのかよ。

……うんにゃ、分かってんだ。どうすべきか分かってんだ。
もう片方のカードを捲れば良いんだろ?

ま、それは俺の問題だからなぁ……。

それよりもだ、この見渡せば呑気に枯れ木が短気を起こしている焼け野原で自棄の肚は糠に釘を打ち続けるだけに為り兼ねないと云う事が問題なんだな。

つまり欲するままには手に入らないわけだね。

結局、逆説的には手ぶらになるしか術が無い訳なんだろなぁ。

「流れに逆らおうとするな。逆らう程に流されて飲み込まれ消し潰されちまうよ。墨汁の海に白い絵の具を一滴垂らしても黒になるだけさ。流れに乗って主張するんだよ」

分かるけどよぉ……でも、よぉ……分かんねえよ!

いざその時にへそを曲げて斜に構える俺がいるんだな。
しかし、俺は絶対に負ける訳にゃいかねぇんだ!

何に? 俺の過去にだ!

其処が何処で、相手が誰で、生死40tのマイナス重難度で自棄の肚で糠に釘を打ち続けるだけでもな!

Get up, stand up

Stand up for your rights

あぁ、相棒には先週の流血の跡が残ってら。
こいつを拭き取って、今夜また出陣だ、相棒よ。
  1. 山川草木
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I want you to love me

2007/05/17(木)


その何かを見上げている横顔のジャケットを初めて手にしたのは、川崎の駅ビルに入っていたWaveだった。

その頃俺は右も左も分からない能無しで、ガイドブックでよく見かけたそのアルバムは憧れの一枚だった。

概ね大体に於いて「入り口はこちらです」と云う様な紹介をされていたと記憶する。

確か一緒にOtisの編集盤も購入したっけ。
あの川崎球場の近くの寮へ帰って即座に聴いたのはOtisだったな。
俺には学生時代にSoul Musicを教えてくれたダチがいたから、何の抵抗も無くOtisの歌声に身を委ねたっけ。

「あぁ……素敵……」

ま、本当のところは「Otisとか聴いている俺って素敵!」的な思い込み&勘違いなんだけどね。

そして、いよいよ問題のもう一枚ですよ。

『テン、テレレレッ ッガボボボン

テン、テレレレッ ブッガボッボボン』

重々しいイントロを縫いながら聞こえてくる歪んだ男の声。

『I dont want to〜』

俺はなんだか肩透かしを喰らったような得体の知れない隙間風を感じながら聴き進んでゆく。

兎に角、なんだか訳が分からん!
二曲目、三曲目と聴き進んでいくほどに益々「?????」

その時の衝撃は未だ色褪せず、克明に思い出す事が出来る。

まず、まるでピンとこないのは言う迄もなく、到底「好きだなぁ」とは欠けらも思わない。
しかし、それよりも驚きなのは「嫌いだ」とも思わない事なんだな。
否、それよりも何をやってんだかまるで分からん。

「コレ、音楽なの?」

大袈裟に言うとそんな感じ。

俺がそれまで聴いたどんな音楽とも違う。
なんと云うか、その……呪文を聞かされている様な感じか。
その異質感は強烈で、それまでの音楽体験をリセットされてしまった。

その座りの悪い異質感は簡単に拭えるものぢゃなく、その夜は「なんなの? コレは?」てなもんで何度も聴いたっけ。

いや〜もう本当に不思議で不思議で、呆れて乾いた笑いがこぼれた程だったな。

それから半年が過ぎた頃かな、ふと口ずさんでいた歌がそのアルバムの二曲目だったんだな。
俺は「アレ? これ何の曲だっけ?」なんて少し考えたな。
暫らく頭を捻りながら歩いて「あっ! あの曲か!」と気が付いた瞬間、一気に親近感が湧いてきて途端に今すぐ聴きたい欲求にかられたよ。

すると、すると、すると、今度は全部が分かるんだ!

ジグソーパズルのピースが綺麗に治まったみたいに、全部の音が音としてグイグイと迫ってくるぢゃん!
あの呪文みたいな歌声は歌として迫ってくるぢゃん!

そしたら今度はコレしか聴きたくないんだな。
もうBEATLESどころぢゃないぜ!

―――それが俺と『THE BEST OF MUDDY WATERS』との出会いだったな。

今、あそこから大分遠いところまで歩いてきたけれど、俺やっぱ、こんなんがやりたいや。
いや、べつにBLUESがやりたい訳ぢゃなくね。
強烈な異質感を放つような尖った音を奏でたい。
  1. 山川草木
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待たせたな、相棒よ……

2007/05/15(火)

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何がどうだろうと「その時」ぢゃなけりゃ成し得ない一歩があるからよ、休日出勤でメロメロだろうが、人前で楽器ぶら下げるのが久方ぶりだろうがお構いなしよ。

新参者に気配りしてくれてんのに「それもこれも芸風だから」と無下に撥ね退け、裸になって熱量勝負の力勝負。

一昨日の夜の全ての優しさにごめんなさいです。

俺、隕石みたいに赤々と燃えながら自分自身を砕け散らせ、青白く燻る余韻を刻みたいのですわ。

一昨日の夜の俺に遭遇した君達は最高最悪ラッキーだぜ!

だけども、Everybody Thank You!
だけど、しかしありがとう……。

俺は暴力衝動を有りの儘相棒に叩きつけ、そのまま地球をかち割るつもりで吠え叫んだ!

相棒は負けじと噛み付き返し、弾き爪を割り、俺の指先も削り取ってゆく。

如何せん真剣勝負の最前線は互いの調子を伺う暇など片時もなく、ただただ流れた血の跡が代償として俺と相棒に苦笑いをさせるのさ。

その根源にあるものは驚く程にはっきりとした「怒り」

抑えきれない「怒り」なのさ!

手に取れないモノ、目に見えないモノ、それらを簡単に踏み付ける者達に対する多勢に無勢の憤りは誰にも聞こえないだろという驕りに対する怒り。

尚且つそこに付け入る反抗の皮を被った虱の群れへの怒り。

それらは全て果ての無い椅子取りゲームだと嘲笑う高みの見物者への怒り!

さもなくば、ただの奇人変人の見せ物小屋だろ?

どんだけアクセルを開け速度を上げても、障害物さえなけりゃ阿保でも真っすぐ走れるわ。
勧善懲悪も予定調和も欲しかねえよ。
その場で即座にくたばる様な「毒の華」の蜜に塗れて、意味も無意味も突き抜けた熟れた果実を、愛憎入り乱れた怒りの果実を「これでもかっ!」と突き出してやる。

これは俺の過去に対する宣戦布告である。
  1. 山川草木
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やはり、何かが……。

2007/05/11(金)


このタイミングでこの偶然。
俺の奇妙な地図は、運命の方位磁石で如何様にも進路を変更し、「兎に角、目指せ!」とげきをとばす。

今までの人生の中で三回程「もう本当に駄目だろうな……」とかんねんし、両手両足を投げ出して捨て鉢になり目蓋を閉じたが、結局間抜け面を晒して生き延びたのも、やはり……、否、否、否、それは傲慢過ぎるとしてもだ!

こんなタイミングで今日、再会を果たすなんて!

やばいぜ……。

彼は俺に「匂い」があると言う。
猛烈に匂い発つのだと言う。

俺達はこんなにも自由だ!

あんたらだって自由なんだぜ!
それを感知しようとすればね。
気付かないはずは無い。

透き通る零の熱を帯びた瞳で、鏡の中の今の自分を見つめてみろよ。

痩せた意識が報われぬ海を呼び戻しても、

浅い眩暈がその舳先を迷わせようとも、

見た目よりもナイーブな波間で息も絶え絶えに揉まれようとも、

俺には分かってるぜ!

最初から分かってたぜ!

生まれた時から分かっていたぜ!

この歓びが、歓びそのものが俺自身になる時、

あの哀しみが、哀しみそのものが俺自身になるんだな。

そして、また雷鳴が、あの白痴にさせる轟きが、宇宙へ響く激情が、遠く近く鳴りだすんだな。

今夜は眠れないかもな。
  1. 山川草木
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典型ならびに無声慟哭&あこがれ

2007/05/09(水)

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何かを見つけると云うよりも、何かを確認しに行く旅になったな。

婆ちゃんは小さく縮こまり、どこか可愛らしくもあった。

猊鼻渓では人の手で創り得ない宇宙の一遍に魅了された。
両岸は十メートル級の岸壁が切り立ち、その頑とした存在力が俺の中のつまらない、ちっぽけな何かにを押し潰す。
頭上では鳶の番いが見事なまでの滑空を見せつけ、穏やかな水面をたゆたう鴨達と相まって、視界には映らない何処か、それはまったくもって何処かなんだけど、生命力の大きな塊(しかし、それは羽毛の様に軽やか)を新緑へ丁寧に、丁寧にふりかけている。

俺は船縁に腕をつき、首をもたげて船頭が歌う追分を聞いている。
その歌声は岸壁に反響し、水面へ反響して俺の世界の全てになる。
その響きが全てになるんだよ。

俺はもう現在でも未来でも過去でも無い自由なところから彼女の後髪を眺めて、テレパシーの様なモノを送り続けた。

すると彼女は静かに振り返り、こっそり笑顔を見せた。

ある一つの感じが宇宙全体の感覚になって、

「あぁ、みんなコレを捕まえようとしたんだな」

と納得する。

俺はますます唐変木になり、意識の中は破壊衝動ではちきれんばかりさ!

 反逆。

 革命。

チョロくせぇ!

ひん曲がりながらも岸壁を登ってゆく藤の蔓。
成り振り構わず生きているその姿は、ほら、あれだ……なんだっけ? 度忘れしちまったけど……びんびんに感じるだろう?
  1. 山川草木
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影燃ゆる

2007/05/06(日)

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二本の足でつっ立って百キロ向こうで何かがおきているのか、いないのか? 見ようと思えば見えそうだし、知らん顔すればそれまでだ。

確かにその川は百年前にも流れていて、水面を掠めた風が頬を刺したに違いない。

立ち止まり、振り返ってみても知らぬ間に通り過ぎ置いて行かれ、追い掛けても、追い掛けても追いつかない。

誰もが何かを伝えようと、あちこちから拾い集めて陳列し、注釈、そしてまた注釈。

匂いも熱も失われた主人無き骨董市に対価をあてがい、「さぁ、ありがたや」と端から上段より襟を直させた後、「我々は誰も彼も無知なんだけど気付かない振りをしましょう」って一方通行のイメージを覗かせる。

人間なんちゃ死の間際だって平気で嘘をつける。

会える時に会いに行くのが一番好都合なんだけど、生憎タイミングを逃したみたいで影を踏むことも出来やしない。

不安気な曇り空の下、川面はびゅんびゅんと走り、目指す梺は春霞でかき消されそうなんだけど、僅かに意識の端の方でゆらゆらと燃える影を吸い込んだ。

例えばそれは「愛」なのさ!

多分、あいつも、あいつも、あいつもね。

「学」ぢゃなくて「愛」なのさ!

それだけで良いんぢゃぁねえかな。

「なんで?」なんて聞かれたら全部しらけちまうよ!

望郷の丘で、城址の隅で、陽炎の様に燃ゆる影。

釜淵の滝で、シロツメクサの中で燃ゆる影。

この手で抱くことは出来ないのか?
  1. 山川草木
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ちっちゃな羽

2007/05/02(水)


本日も痺れる労働に従事し帰宅すると、連休だからだろう、妹が訪れていた。

職場の先輩の送別会があったので大分遅い帰宅時間だったが、二歳になる姪っ子はまだ寝ていなかった。

布団の中から、じぃーっと見上げている彼女。
「俺のこと憶えているのかなぁ?」
取り敢えず手を振ってみると、布団から小さくてずんぐりとした手をニョキッと出して思い切り振り返してくれた。

「オッケェェーッ!!」

今日一日の腐れなすびな出来事全部をコレで帳消しにしよう。

俺は洗面所へ行って顔や手を洗い、着替えを済ましてからまた彼女の寝ている部屋へゆくと、今度はすっかり熟睡している。

微かに聞こえる程の寝息をたて、「なんでもない」寝顔をして長めの睫毛を下ろしている。

俺は一緒に寝てしまいたい衝動に駆られるが、それと同時に恐怖感めいたモノを胸の内に感じて、そっと部屋を出た。

「またな……」

部屋の外から声をかけ、自分の部屋へ上がり荷物をまとめる。

北へ向かうのだ!

夜明けとともに。
 
何かがあんだか、ないんだか、まったくもって知らないが、

兎に角、北へ向かうのだ!

見ろよ! 今宵の月は満月で、翔んで行けそうなところに浮かんでいる。
  1. 山川草木
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Dig Your Own Hole!?

2007/05/01(火)


「いや〜ビックリしたよぉ。お父さんの若い頃にそっくりなんだもの。お父さんが若返って帰って来たのかと思った」

「んだどもぉ、笑った顔は姉さんそっくりさぁ」

「昔ね、お父さんが新聞配達のアルバイトをした時にね、初めての給料で柱時計を買って来てさぁ。『時計を買ってきたぞぉー』って畑のむこうから大きな時計を背負って帰ってきてね……」

「んだ。あん時は兄貴の奴、いやに格好いいなぁ〜と思ったさぁ」

「古い家を壊すまで、ずぅぅーっと使ってたさぁ」

「兄貴はホント、学生の頃から全然喋らなかったわ。本ばかり読んでたもんなぁ。もぅ、凄いのさぁ。学校の図書室から図書館の本まで読んでない本は一冊もないって言ってたからな!」

「ぢゃぁ、みんな多かれ少なかれ親父に似たんだ……」

「俺もなんだか真似して難しい本さ読んでみたけど、全然駄目だもなぁ。結局、兄貴の分まで喋っちまうお喋りになったさぁ」

「なんだか、カラオケ大会の司会やるんだよぉ」

「おい、お前! 自分で歌作るんだべ。歌詞さ教えてみろ」

「えぇぇぇーっ! 歌詞を……」 

「最初の二、三行でいいから言ってみれ!」

「歌詞だけ言う位なら歌った方がいいわ……」

「ほんなら、歌え」

「歌うわ。『俺に取り憑いた悪夢もそろそろぉ〜』……」

「そら、違うよ! もっと元気良くやれって! 『おーれぇーにとぉーり憑いたぁ、あぁーくむぅもそぉろそぉろぉー』こぉだべ?」

「……はぁ……あのぉ」

「お父さん、十二時過ぎたよ! もう寝なよ」

「んぢゃ、しゃぁね。寝るか」

「おやすみなさい……」
  1. 山川草木
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