Stray Cat Blues

俺たちにも明日はある!

誰が為に鐘は鳴るのかな?

2007/02/24(土)


今朝、車中でラジオを聞きながら運転していたら『赤ちゃんポスト』の話をしていた。

俺はてっきりイタリア辺りの話をしているのかと思ったんだ。

なんとなしに聞き続けていると日本の話だった。

「必要か? 否か?」で様々なコメントを紹介していたが、まったくどちらの意見も「なるほど……」と思われ何とも判断しかねる。

しかし、俺、個人に於いては「そんなものいらん!」である。

以前、「戦争と平和」についてある青年が俺に持論を披露した。

「なるほど……ある部分はその通りである」と耳を傾けていたが、青年は俺にも「そう云う意識を持つべきだ」と熱くなりだした。

青年よ! それは違うよ。

君の極少な政治思想。そんなもの俺にはいらん!

なんだか最近は銅の値が上がっているらしい。

それに伴って半鐘を盗む奴がいると云う。

そりゃ今時、半鐘鳴らすなんて事はないんだろうがよ。
あんた、古い物は明治時代からあったんだって言うぢゃない。
あんたの爺さんや婆さん達を守ってきた物なんだぜ!

まったく。そんな目先の金が、一体何になるのか俺にはてんで分からん!

なんだか「ショボい」よ!
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:1

A CHANGE IS GONNA COME

2007/02/22(木)


よう! JOHNNY BOY!

さっき、かび臭いコックピットでマチャと、在りもしない話から、ありとあらゆる失敗と成功の僅かな差異について、下世話に脚色して笑っていたところさ。

他人が伝える噂の真相は意外や意外、そこいら中で金持ちになるべきぢゃないスットコドッコイに夢中で転ぐり返しをさせちゃぁ、喝喝になった胃の腑へ真理めいたモノを落とし込むらしい。

マチャの話を聞いてたら、そう思ったな。

何処だか知らないが小者にゃ渡れない川が横たわっていて、その川辺で右往左往している不機嫌そうな猫やら、油でテラテラの象虫に堪らなく愛しさを感じてしまう俺も相変わらずだな。

で、まぁ昨日の事なんだけど、ある現場で職業柄デジタルについてのアレコレをたっぷり講釈されたんだが……まるでアホみたいに面白味に欠ける事この上無い! ところがコレが『お金』になるんだな。

いや、本当にもうびっくりする位『お金』になるんだわ。

勿論、使い用によっちゃぁ「糞のつっかえにもならねぇ」ただの方法論だよ。

けっ、馬鹿くせぇ!

なぁ、JOHNNY BOY.彼らは頭脳がつるぴかどんで明晰すぎる程に明晰だ。

かたや猫だの象虫共は片っ端から、つんつるてんなんだから泣き笑いさ。

そんでもって、そんな猫だの象虫共が抜群の腕前でもって、あらゆる難関を乗り越え「仕事」としてデジタルをバッタバッタとやっつけてんの!

はははのは。

痛快だねぇ。

みんなウンコはするけど後始末はしねえし、自分がしたウンコが最終的にどうなるかは知らねえって云う寸法なんだぜ。

ほんでもってやっぱり「ほいきた、出番だぜ!」ってなもんで痛快な猫だの象虫共が後始末するんだが、出品された方々ときた日にゃぁ目障りだの邪魔だのと喚き出す始末なんだよ。
そんな事を大々的にやられると迷惑なんだって。

結構ね、不慮の事故で死ぬ奴もいるんだぜ。

まぁ……痛快なる猫だの象虫共も、泥棒とか、かっぱらいみたいなモンを胸の内に秘めている訳だけども……。

なぁ、JOHNNY BOY。

「人間」として生きてるっつうのはAmbivalenceなモンなんだな。

とことん喜劇だし

とことん悲劇だし

とことんペテンだし

とことん正論だぜ!

まぁ、Sam Cookeが枕元で「おやすみ」って言ってるから、もう寝るわ。

じゃ、またな。
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

慈悲を乞うては悪乗りに興じて

2007/02/20(火)


確かに俺は一人の修羅なのだ

俺はハイエナと狼の合いの子で

ぐらぐらに泡起つマグマの粒子で

汗ばむ肌のおもてを駈け抜けた一閃の疾風で

じめついた縁の下に隠れ込んだナメクジで

卑劣な罠を張り巡らせた脂ぎる野卑なヒヒで

戯言を量産し続ける高性能不理解絡繰りで

きみの真意に気付かない馬鹿な男野郎で

理想ばかりのヤサでヤワなぺんぺん草なんだけど

よし、消えてしまおうと決心した途端に逢いたくなり

よし、歌ってみようと思い起てば頭痛に悩まされ

ほれほれ、またうねりながら盲の行列が笑いかけてら

恐ろしい程に突き刺され震わされ空虚になって
ふわふわと浮遊し流され根無し草みたいに
一体、どうやって生きてやがる

しかし、再会すると他愛もなく君が一掃してくれる

これか!

これなんだな!

これが『愛』ってやつか!

修羅だろうが、ハイエナと狼の合いの子だろうが、マグマの粒子だろうが、駈け抜けた一閃の疾風だろうが

水溜まりからボウフラみたいに涌いた訳ぢゃない

おやじとおふくろが銀河をノックして

今、君をノックしているんだぜ!

俺はこれこそが“ROCK&ROLL”なんだって遠吠えする!

この夜に

この夜に

この夜に
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

手も足も出ない。

2007/02/18(日)


悪い癖だ……。

「直せばいいぢゃん!」

なんて簡単に言うなよ。

一つ残らず選り好みして必要最小限にしたところで、次から次へと新たな風が吹いてはその気にさせる。

むしろ最初から疑問を持たずに、今居るところであぐらかいてニタニタ笑っていたら……想像出来ない。

だってよ、

こう、一本道があって歩いているわけだ。
どの方角へ向かっているのか知らないけれど歩いているんだな。
道々、気になる花やら鳥やら風やら月に目をやって、摘み食いしたり踏み潰したり歌ったりしてな。

暫らく行くと別れ道になってな、右の道も左の道も大きさは変わらないわ。
なんとなく左の道を選んで歩きだしたね。

空は高いし、海は碧いしで気分は上々だな。
夜は深いし、炎は熱いし笑いが絶えないぜ!

あれ……? また別れ道だわ。

気にする事ないぜ!
なんとなく北がどっちだか分かったしな。
どんどん行ってみよう!

あれ……? またかよ。

今度の別れ道は今までと大分様子が違うな。
「予感」がするぢゃねえか。

はい、はい。腕を振って足を上げてワンツー、ワンツー休まないで歩けぇー。

それ! ワンツー、ワンツー。

そんな具合でどんどん歩いて歩いて行くわけだ。

やけに日差しが厳しいぜ。
ゆんべは月が欠けてたね。

すると……

またか……別れ道。
最近多いなぁ。
やけに今回のは左の道が細いぢゃねえか。
獣道のようだぜ。
はい、左ね。

しかし歩き続けるのも楽ぢゃないけんども楽しいね。
また会いたい景色が遠く近く呼んでるぜ!
勿体ないから今までのもの全部担いで来たけど無謀かな?

ほら、やっぱり別れ道。
そろそろ頃合いだと思ってたさ。
もう右と左の区別が付かないなぁ。

――夜中に目が覚めて雨が降っていた。

なんとなく醒めちまって 枕元にWhitmanとかBaudelaireとか田村隆一を並べて

手当たり次第に乱読して

たまに窓際へ起きだして不味い煙草に咳き込んでみると

降り続ける雨粒は目に映らず

陰気臭い雨音だけが叩き続ける夜を

無機質に立ち並ぶ電柱の白色灯が不気味に影を造り

あぁ、夜も真っ暗なら穏やかなもんだと生欠伸を吐き出して

この世界なら無一文でも一向構わない

そんな安堵が音楽やら詩に彩られて

やっと眠れそうな明け方

若干、小腹が空いたけど……
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

季節がてんやわんや

2007/02/16(金)


「おらげの婆ちゃんさ長崎で暮らしてっ頃、猫さ飼ってたろ。したっけ今、姉ちゃんちで犬がワンワン鳴いたら可哀相ぢゃてすぐに食い物放ってやるから肥えちゃうんだ。アイツもアイツで見境ねえから何でも喰っちまう。せいぜいトマトとバナナだけは臭いさ嗅いで食べないけども……昨日はあねきのバックを開けてチョコレートくわえて逃げたもな。びっくりしたわ。銀紙ごと食べてんだ、アイツ。幸せなのか不幸せなのか考えてみると、生きてっちゃそんな位で塩梅いいかもしれねぇなと思ぉ事もあんな。婆ちゃんはアレでもアイツに助けられてっかんな。俺ぢゃぁ仕事もあるしで面倒みるのも容易ぢゃねえ。四六時中話かけてんだかんな。あねきは怒って人間ぢゃないんだからなんて言うけども、それがどうしたって訳だって云う話ぢゃねえか! もしかすりゃ婆ちゃんはそれも承知で話てっかも知んね。一緒に寝起きして散歩して一日中話してりゃ自分の分身と変わんねやな。」
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

好きさ! 好きさ! 好きさ!

2007/02/14(水)

20070214212745

やっぱり、なんだかんだ言いながらもTHE BEATLES の『LOVE』を聴きながら至福の時間を過ごす俺。

既に存在しないバンドなので、これからも新譜と云う名の変化球が放られてくるのかも知れない。
そして、その全てが際どいコースで俺のストライクゾーンを突いてくるのだろう。

そして、俺は阿保みたいに力一杯バットを振るんだろう。

もういいよ……。

無駄な抵抗などせずにトコトン付き合うよ。

やっぱ好きだからな。

先日、『COME TOGETHER』を聴いていたら思わず溜め息が一つ。なぜなら、

「あぁ、ジョンはいないんだな……」

そんな思いと同時にK某やH某もいない事を思い知らされ、強烈な喪失感が胸中を埋めたから。

俺達みんな気が付けば口ずさんでいた。

「NOWHERE MAN」だったり、

「IN MY LIFE」だったり、

「NOT A SECOND TIME」だったり、

以前「詩を書く奴が萩原朔太郎を知らないのは、音楽をやる奴がビートルズを知らないのと同じだ!」と言った格闘文筆家がいた。

俺達みんな、THE BEATLESが大好きだ!

あの、ジョンが撃たれた日に親父が「死んだ、死んだ……」と言っていた。
俺は洟垂れでビートルズを知らなかったし、どんな感情も吹き抜けやしなかった。

今になって「あぁ、あの時か……」と思い返すだけの記憶だ。

あの日から暫らくの間、親父のカーステではビートルズばかりが流れ、その車で保育園へ送り迎えされていた妹達は出鱈目英語(言語)でビートルズを歌っていた。

俺より彼女達の方がビートルズ原体験が早かった訳だ。

ハンブルグで皮ジャンにリーゼントの写真を初めて見た時、「なんだ、俺と一緒ぢゃん」なんて勘違いして一気に親近感を覚えたな。

俺が「ロックなんぞ、まやかしぢゃねえか!」って腐ってた時に、またギターを持って二本足で起つ切っ掛けをくれたのは“荻レノン”と名乗るビートルズおやじだった。

俺達みんな、ビートルズが大好きだ!

単純にそう思える事はハッピー! だよな。

――写真は十代の頃の俺。ビートルズを知り始めた頃。
萩原朔太郎はまだ知らない。

ALL YOU NEED IS LOVE.
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

S.C.B REVISITED

2007/02/10(土)


THE BEATLESの『LOVE』はなんとも複雑な心境にさせるアルバムだ。

それについてアレコレ書いても重箱の隅を突く愚痴ばかりになるだろうから自主規制する。
何れにせよ惚れた弱みで何度も聴いてしまう訳だし、実際のところ毎日一回は流してるからなぁ。

以前発売された『1』は買わなかった。
理由は「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」が収録されていないから。
勿論『1』はある企画意図があっての編集盤だったので「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」が選考漏れするのは仕方ないけんども……
いやね、何度も手に取ってレジに並ぼうとした事はあるんだけどね。
惚れた弱みでね。

俺にとっては「STRAWBERRY〜」が選考漏れした事が選考漏れの原因でしたな。

いつかは『1』も買ってしまうだろうな。
惚れた弱みでね……。

その点『LOVE』は収録されていたから即買いでした。

そしてあらためて「やっぱ好きだなぁ、この曲」と思い知るんだな。
こう云った回想させる曲を描いたらジョンは天下一だよなぁ。

皮肉たっぷりでつっぱっているジョンも素敵に痺れるが、琴線に染み入るこの手の曲(IN MY LIFEとか)があるから益々メロメロになるんだな、俺の場合。

ま、惚れた弱みですな。

――俺はまだ11才位で、半ズボンをはいて走り回っていた頃。

あきひろ達が「猫がいるよ」って杉田テレビの前のバス停でガヤガヤやってた。

見ると真っ黒な子猫が一匹、見上げる様にちょこんとみんなの真ん中に座っていたっけ。
俺らは杉田テレビの壊れた洗濯機の中に隠して学校へ行った。
誰が飼ってやるのか道々相談しながらね。

そして俺が連れて帰る事にしたんだな。
名前は『トミー』って付けてやった。
その頃テレビで『噂の刑事トミーとマツ』って云うのがあって大好きだったからね。

あの猫特有の夜に寝床へ忍んでくる感じが好きだったな。

トミーはすぐに家族の一員になっちまって家の中を悠々と歩いていた。

俺はずぅーっと鍵っ子で、学校から帰っても誰も居ないのが常だったけど、トミーが来てからはアイツが出迎えてくれたから嬉しかったよ。

あの日は休日で、俺は自分の部屋でボケボケしてた。
ふと犬が騒いでいるのに突然気が付いて何事かと二階から顔をだすと、野犬が二、三匹で吠えたてながら何かを追っているんだな。

その先へ目をやると追われているのはトミーぢゃないか!

俺は「ちくしょう!」とすぐに飛び出て犬共を追い払い、小さな松の木にしがみ付いたトミーを抱いてやると、トミーはすでに血だらけだった。

相当に下半身側を噛まれたらしく、お腹の辺りは触るとぶよぶよしてた。

「どうしよう……?」と親父やおふくろに相談したけれど、二人とも「残念だけど……」って感じだった。

結局、俺は何もしてやれず翌日になるとトミーは姿を消していた。

家族の誰もが行方を知らず「あんな体でどこに行ったんだ……?」ってショボくれて学校へ行った。

帰宅するとおふくろが「トミー、いたよ」って教えてくれた。

「仕事へ出る前にお父さんが見つけたって」

トミーは裏口の洗濯機の下で息をひきとってた。

「猫も死ぬ時は姿を隠すんだね」

そんなおふくろの言葉を背中で聞きながら、俺はトミーを抱いて外へ出た。
そして小さな公園の小さな池の近くにトミーと別れた。
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

つぼみがひらくとき

2007/02/09(金)

今日も四ツ木橋をとびこえて帰宅してみれば、一通の便りが俺を待っていた。

先日焼き鳥屋で俺にクイズ攻撃を仕掛けた女の子からだった。

封を切ると開運招福とプリントされた招き猫のお年玉袋。その中からはB5サイズのイラスト……いや、絵……?
違うな。「気持ち」だな。

そう一枚の気持ちが出てきた。

紙面一杯に描かれたソレは何処から生まれて来るのか見当もつかないが、不思議とバランスを保ち、俺に何かを投げ掛けて楽しませてくれる。

大きな円がどぉーんと中央に座り、その中に風車らしいものやら石塔らしいものがある。
その上に音符と天使みたいなものが浮かんでいて、アルファベットで「CHRISTMAS」と綴られていた。

あ、竜の落とし子だな、コレは。

円の周りを囲む様に四隅には色々な物が笑いながらこちらを見ている。
彼らはみんな何処かで以前会った気がする一見様ばかりだ。

右上には冠を被った猿のカップル(多分)

左上は魔法使いらしき人物と顔のある星とかハートとかの子供達。

左下は……? コレ、なんだろ?
パス。

右下はお下げの魚と犬猫の類ぢゃ無い四つ足。

全体的に世界地図と云うか、宇宙地図と云うか……? 兎に角そういった雰囲気がある。

じぃーっと見ていたらゴッホが描いた『Tambourine with Pansies』を思い出した。

ありがとう。

俺はこの奇妙な地図を拡げて、また旅に出てみるよ。
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

Mau-scco-uichi-dan'ya-ke

2007/02/06(火)


四ツ木橋から首都高にのり三郷方面へ走る

“どべぇぇー”っと左手に広がる夜景の灯りにおののく
「あぁ、都会ぢゃな」

高いビルには追突防止警告灯の悪っぽい赤が点滅していた

なんだか目を細めて気を遠退かせると、無数の夜光虫が巣食う、朽ちかけた深い森閑を覗いているみたいだな

三郷JCTから常磐道に入り、柏辺りをくぐり抜ければ一転して真っ更な夜が何処までも続いてゆく

たかだか十分そこいらの……いや、もうちょっとかかるかな? 兎に角、違う世界同士が何処かで隣り合わせで、何処かで断ち切られている不思議

俺は四ツ木橋を渡る時に、距離や時間以外の物をとびこえて双方を行き来しているんだなぁと思う

親父は大伯父の葬儀を終え岩手からの帰路を走っていると云う

あっちは雪だ

Lauryn Hillを聴きながら窓の外では赤い月が浮かんでいた。
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

なんだか分からないけど……。

2007/02/04(日)


田舎町の蕎麦屋の暖簾をくぐる。

店内は蛍光灯の類が点いておらず、窓から射し込む外光によって薄暗い中からお品書きや黒塗りの椅子、机などが浮かび上がる様に見える。

お一人様の俺様は、二人相掛け様の席をすぐさま案内されたので、その年季の入った黒光りする卓に前のめりに腰掛け、たぬきそばと半カツ丼のセットを注文した。
テレビも無く、ラジオも流れていない。
それが心地良い。

暫らくすると昼時なので何人かの人が入ってきた。

作業服の男が一人。

爺ちゃんと婆ちゃんと孫とお母さん。

作業服の男は俺の右手の卓へ、御一行様は丁度俺の正面の四人掛けに座った。

静かな、ゆっくりとした五、六分が流れてゆき(そう、それは正に流れていったね)たぬきそばと半カツ丼のセットが卓に並ぶ。

丼を引き寄せると蕎麦汁の薫が鼻孔の奥から喉の奥を抜け、生温かく食い気を刺激した。

「こいつは美味いに違いないぞ」

大概、初めて暖簾をくぐる店ではもりそばを頼む様にしている。
それは多少不出来でも食せるから。
しかしこの店は一歩踏み入った時のゆったりした雰囲気で、八割り方信頼して由とさせた。

おいしいなぁ。うん、おいしいよ。

作業服の男は俯き加減で、もくもくと食べている。

正面の女の子はお母さんの丼から二、三本貰い、婆ちゃんの丼から二、三本貰いしながら一生懸命口をつぼめて、ちゅるるるるとはね上げながら食べている。

俺はむかーし昔のダチの事を咄嗟に思い出した。

そしてなんとも言えない想いがそこいら中を埋めてゆき、誰かに話し掛けて清算したいが話し掛ければ途端にワッと泣き出しそうな複雑な心持ちで勘定を済ませる。

ありていの蕎麦屋であるんだが、胃の腑へ素敵に落ちてゆく丁寧な手打ちだった。

ありがとよ! 美味かった!

暖簾をパッと額の前で払うと、山からは凍える風が吹き下ろしていた。
  1. 山川草木
  2. | トラックバック:0
  3. | コメント:0

FC2Ad

FC2ブログ 紹介予定派遣