Stray Cat Blues

俺たちにも明日はある!

無題

2006/03/31(金)

今宵 銀河急行に乗り込んで ティラノザウルスに会いに行く

丁度 今宵は下弦の月

あのトンガリを掠めて 火星経由のジュラ紀行き

車掌はジミ・ヘンドリックス

徽章の付いた帽子を被り ジョイントを吹かしている

白鯨のような客車の中では ブリジッド・バルドーがタンゴの相手を捜している

「エンジンに火を入れろ」

ブッカ・ホワイトの密造酒で潰した声

滑りだす列車と併走するのは Vツインに跨がるマーロン・ブランドだ!

ふと気がつけば 右手の座席に カミュ「異邦人」が置いてある

あぁ 迷い込んぢまった……

そう云えば 日本にはティラノザウルスはいないんだった

蒸せかえる熱気の向こうに シダやソテツが群生している

今 俺は 本当に生きているのだろうか?

足元にはティラノザウルスの大腿骨が レールの枕木の様に転がっていた

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慈愛を安売りして叩きつける

2006/03/30(木)

この世界に「果て」なんて云うモノがあるのか?

今夜も大熊座が頭上で「ガォー」って吠えてる。

8時間後には猫達が起こしに来るだろう。

12時間後にはギラギラする水平線を見ながら、心の準備をしてるだろう。

明日はもう少しまともに、唄えるかもしれない。

そしたら猫達にこっそり教えてやろう。

「進化論」はトンだペテンなんだ!

そりゃぁー! トンでるペンで点をうってやれ!

ジンガロン。

うむ。ちょっと良い感じ。 漢字をあてたら「人我論」こんな感じか。

うむ。卑しくて意味深だ。

閑話休題。

本日一緒に作業したナルシマさんは、デッカイ農業家。聞くところによると十六代目らしい。 人生五十年でざっと計算しても、八百年! 

そんな八百年越しのナルシマさん曰く「この空の下の何処かに必ずアンタのカミサンになる人がいるんだど。出会う機会があれば、きっかけなんちゃ靴が片っぽ脱げただけで良いんだど」

なるほど。八百年続いた秘訣は、脱げ易い靴を履く事とみた! すいません。冗談です。「昔から農家だったんですか?」の問いに「俺で十六代目だ」と即答されて、その重みに、その壮大さについ皮肉がポロリと出てしまいました。

更にナルシマさん曰く「筑波石なんちゃ、筑波山の麓さ掘ったら何処でも出てくんだ。松でも一本植えて、その脇さ転がして築山こさえたら、三百万くらいになっちゃぁど」

ガビィーン! お、驚き……。ツクバイシなんて初めて聞きました。ゆ、有名なんですか? ほぉーぅ。 雨風に晒され年数を重ねると、艶が増してゆくんですね。

雨風に晒されて……艶が増す……石ころが……。

おそらく何百年も地中に埋まり、掘り出されたら艶を増すツクバイシと、八百年農家のナルシマさん。

心優しい科学の子など現れないが、進歩しつづける世界は「買う」+「売る」+「買う」+「売る」×∞ の大安売りに大行列だ。

ジンガロンの行く末が「この世の果て」なのかもしれない。

慈愛を安売りして叩きつける
  1. 山川草木
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未来少年達が翼を拡げて呼んでる

2006/03/28(火)

背丈を5m程伸ばした杉林。こいつらが植林される前は落花生畑だった。 その落花生畑で、当時働いていた「コキ爺さん」と呼ばれる爺さんがいた。

なぜか今になってコキ爺さんの言葉が思い出される。

「一つだけヒントをやるから、一つだけ賢くなれ。絡まった糸を解くには、ゆっくり眺めてから押すんだな」

これが一体何のヒントなのか、その説明もしないまま得意気に首を鳴らして煙草をくわえたコキ爺さん。 俺達は大して気にもならず「可笑しな爺さんだな」位で済まして、その場を去った。

しかし、いつ思い出してみても訳が分からない。 否、「絡まった糸を_眺めてから」までは不思議ぢゃない。その後の「押すんだな」が意味不明なんだ。 一体何を押せば良いのか? 否、ヒントだって言うのなら、そこには答えが居ないんだろ。否、その前に問題がドコかにあるのか?

つまりは「絡まった糸」が何かと云う事なのだが……コキ爺さん、余りにも意地が悪いぜ。 なんとなく、捕まえる事が出来そうなトコロまでは行けるけれど、寸でのトコロでまた絡まるぢゃねえかよ。

落花生のかわりに元気よく背丈を伸ばす杉達は、絡み合う事もなく、真直ぐ伸びてゆく。 俺は絡まったり、もつれたりする押し問答をしながら、賢くなれずにコキ爺さんの年令をむかえるかもしれない。

誰か嘘でも良いから答えを教えてくれ。

未来少年達が翼を拡げて呼んでる
  1. 山川草木
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無限大の反対の賛成

2006/03/27(月)

正しいと思う方へ真直ぐ進む事は、時に残酷だ。

正しいと思う方へ真直ぐ進む事は、時に悲しい。

正しいと思う方へ真直ぐ進む事は、時に勇気がいる。

なぜ? なぜ? なぜ?

堂々巡りのシーソーゲームに勝敗は無いが、違和感だらけのパラレルワールドに限界を感じるならば、勇気をだして時には残酷に、時には悲しくなるしかあるまい。

感情に左右されないクールな奴を気取る為には、形容詞をとことん排除すれば良いのだが……。

なんでもかんでも「かわいい」とか「シブイ」とか冠つけて、無理矢理セーフにするのは「かわいく」も「しぶく」も無い。

あれ……クールな奴を気取るって云うのもダメだな。
それこそ山奥で霞でも食らうような生活を送らなきゃならなくなる。
これが被害妄想なのか、誇大妄想なのか分かりかねるが、どちらにしても馬鹿げている事も重々承知なのだ。
やっぱり地球は回っているし、オマケに月も回っているしで、どこまでも転がり続けて最後はドボン……なのかねぇ_。

俺もよくよく馬鹿だわな。

Like a Rolling Stone

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  1. 山川草木
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恋のダイアル6700

2006/03/24(金)

ハロー! ハロー! ハロー!
毎週金曜のこの時間はロンリーウルフ・ブロッコリがお送りするロックンロール・レディオ『飛び出せ!山羊武士」でブッ飛ばそうぜ!
お相手は勿論、狼の皮を被った緑黄野菜ロンリーウルフ・ブロッコリさ!
まずは景気付けに、このナンバーから聴いてくれ!
福島県のスズキ君からのリクエストで、沢田研二の、オーイェー! ジュリーだね。『おまえがパラダイス』カモン!

_♪♪♪♪♪_

サンキュー、エブリバディ。なんだ、なんだスズキ、この野郎! パラダイスなナオンに出会えたのか? コンチクショウメ! 
チュッチュ、チュッチュしてんだな。風邪ひくなよ。

次のリクエストは栃木県のラジオネーム「泥饅頭」から頂きました。何、何、メッセージがあるんだな。
〈ロンリーさんは〉おい、おい、ロンリーさんは止めろよベイベェ。俺は寂しがり屋ぢゃぁねえぞ。〈冷え性なんですか?〉……。

大きなお世話だ! この野郎! 身も心も懐まで冷え冷えのツンドラ気候だよ! 猫だけが話相手だ、文句あっか!

え_続いてのお便りは、宮崎県の仲代さんからのリクエストで、水前寺清子『365歩のマーチ』ワンツー、ワンツー!

_♪♪♪♪♪_

う_ん。幸せなぁ……歩いて来ないわなぁ。ままになる日もならぬ日も、どっかで待っててくれるのかい? おーい、幸せやぁぁぁぁぁい!

どんどんいってみよう! 続いては世田谷区、ボビーからのリクエストで橋幸夫&吉永小百合の『いつでも夢を』をどうぞ。チェキラァゥ!

_♪♪♪♪♪_

ボロは纏えど心は錦、山のお寺の鐘が鳴る。星は秘かに、愛は優しく、いつでも夢をと歌ってる。それ程重くも無いだろう。それ程軽くも無いだろう。俺も持つから、君も持て! いつでも夢を、いつでも夢を。いつでも唄っていきましょう。

それでは、そろそろお別れです。今夜、最後のナンバーは植木等とクレイジーキャッツで《そのうち何とかなるだろう》をお送りします。

それでは来週のこの時間まで、ごきげんよう! バイバイ。

見ろよ青空、白い雲

そのうち何とかなるだろう

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  1. 山川草木
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ソコから一体何がみえるのか?

2006/03/23(木)

毎度バカバカしいお話をお一つ。

21_2才の頃、明治生まれの婆さんが住む家の二階に部屋を借りていたのだが、この部屋の天井の羽目板が、今でも脳内記憶回路に残っているらしく、ふとした折に浮かび上がっては、あの頃の得体の知れない感情を呼び起こす。

昨夜、東京ドームではストーンズが華やかに宴を催しただろう。
会場へ向かう友人から「もしや、来ているのか?」とメールがくる。

「残念ながら今回はパスです」

力なく返信すると、あの羽目板の記憶が甦ってきた。

こげ茶よりもっと黒ずんだ羽目板に、太いのから細くと波線が横たわる。
そして、ところどころに節が目玉を造っている。
この節の目玉が曲者なのだ。
天井の羽目板であるが故、寝る為に横になると必ず目玉と目が合う。
すると何時の間にか、五年後、十年後の事を考えている自分がいる。
それは未来予想図とか人生設計からは程遠く、漠然と「五年後も、この節の目玉を見上げていたらどうする……」と云った自滅的な考えで、勿論ふりはらう事も出来るのだが、あの目玉と目が合うとまたソコへ吸い込まれてゆくのだ。

I Just Wanna Make Love To You

頼みの綱はギターしかない。へっぽこギタリストは必死に練習した。これだけ音楽を、ロックを愛しているならば報われない事はあるまい。そんな変な確信を抱きつつ、現実社会の中での具体的な関わりには目もくれず、ただ闇雲に、ただ漠然とギター、ギター、ギター。
今だからこそ冷静になって振り返る事が出来るが、そこには「好きな事やって飯が食えたら良いぢゃん」とか「ロックスターになりてぇ_」といった動機も十分に含んでいた。若さって求めるばかりだからよ。
だけどその一方で混じりっ毛無しに『音楽』を手に入れたい、自由自在な『音』を弾け飛ばしたい。アイツとかコイツとかソイツみたいに。
そうなれば俺は無敵だ! そうなれば節の目玉だって屁でも無い!

I'm Free!?

結局、その節の目玉がある部屋から引っ越して、少し能天気に七転八倒な日々を送るのだが、相変わらずギターは傍にあった。
もう愛情なんか飛び越えた意地で続けていた時期もある。
ボロクソに叩きのめされて明日が見えない時期もあった。
人生至る所にバンカー有りだけど、ギターがあれば何とかなった。
それはどんな世界も同じだろうが「継続は力なり」で、十年やってやっと気付く音があったりするからだ。
その音は明日へと響いて、俺をその気にさせた。
すでに目的も忘れ、節の目玉よりも深遠な世界で右往左往しながら、少しづつ手に入れてきた俺の音。

一時期「これはただの現実逃避ぢゃないか……?」と思い、封印しようとしたが結局は手にしてしまった。
その理由は身近にリアルな音楽を紡ぐ奴らが居たからかもしれない。

最近も時間があればご機嫌に響かせている。
もう頭上には節の目玉は居ない。たんぼの真ん中で、大宇宙の真下で「半分位は手に入れたかなぁ」と指板に指を走らせる。

もしかすると完全に手に入れる事は不可能かも知れないとも思う。空気中をはかなくも消えてゆくからこそ美しいのだ、音楽は!

だから皆がドームへストーンズを観に行くのだ。
節の目玉が覗いている閉塞感を粉々にして貰う為に。

俺は行ってないけど……。

『12のフレットと6本の弦に人生の全てがある』
――Keith Richards

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  1. 山川草木
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働くおじさん、こんにちわ

2006/03/21(火)

「聞いてくださいよ。いつも電話する度に『ヒロシは大人でしょ』とか『我儘すぎるよ』とか言うんですけど、あいつだって相当に物分かりが悪いし、我儘なんですよね。だから言ったんですよ『お前だって我儘だし、子供っぽいこと言ってるぞ』ってね。そしたら『しょうがないよ。ユキは女の子なんだから』って言われました。あぁ、なるほどって思わず納得しちゃいましたよ。ハハハ、ハ、ハ、」

この先 事故の為 4Km渋滞中

「いや_昔、浴びる様に呑んでたんですけど、その内呑むと胃が痛むようになっちゃって、やばいなとおもって量を少し抑えたんですよ。えっ? 病院は行かなかったですね。診察して症状を聞いちゃったら、病気になっちゃうぢゃないですか。今はなんとも無いですね。美味しく呑めますよ」

俺 鰺と鰯

「蟻んこって皆一生懸命働いてるぢゃないですか。でも全体の20%は出たり入ったりしているだけで、何もしないで遊んでるらしいんですよ。で、その20%を排除すると、残った蟻の20%が遊びだすらしいっすわ。つまり、俺はその20%なんですよ。皆が気持ち良く働ける様に、サボっていると云う訳です。そうやってバランスを保ってるんですわ。」

巡礼だ、巡礼だ、苦しみつつ、なおはたらけ、安住を求めるな、この世は巡礼である――ストリンドベリイ

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俺たちゃ裸がユニホーム!

2006/03/20(月)

数々の伝説になりそうな無頼漢達に出会ってきたが、その中でもグラさんはズバ抜けていた。

グラさんは昭和の十何年かの生まれだと言う。つまりは爺さまだ。田舎の大兄弟の何番目かで、生年どころか月日もはっきりしないらしい。
いつも生年月日を記入する書類があると「いつだっけか?」と俺に聞いてきたものだ。

グラさんは草木の名前に詳しい。
見た目が怪人の様に規格外だが、生活力に長けている。
草木の名前に詳しい理由はこうだ。
「食べれるか、食べれないか」
やはり世代的に、子供の時分はお腹一杯食べれる事が最優先だったらしい。それ故、食べれる草、食べれる実を覚える事は大切なんだという。
そう言うグラさんの口の周りには、何時も何かの草を食べてきた形跡があったっけ。

グラさんの骨は太い。有に俺の骨の2本分はある。
年齢差が三十年もあるのに、ふんばりが俺の三十倍ある。
根をあげるのは何時も俺が先だったが、グラさんに「辛抱、辛抱」と言われたら踏張れたものだ。

真冬で素肌にジャンパー1枚、雪が降っても素足にサンダル、銀杏を素手で触ってかぶれないし、一般人なら火傷する化学薬品まで素手で使って屁でもない。だけど泳ぎはてんで駄目。

多分は最後の世代だろう。

どこかで会おう。生きていてくれ。
土産に二つのサイコロは貰ってないが、振り出しに戻る旅先で、今アンタを思い出したよ。

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  1. 山川草木
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Lay Lady Lay

2006/03/19(日)

春である。

空も風も、色も匂いも春である。

窓際でサワラが寝ておる。
びろ_んと四肢を放り出して、目を細めておる。

耳がぴくぴくとしてるから、こやつめ寝たフリかもしれない。

ブチも寝ておる。

鼻を鳴らして寝ておる。

たまに思い出したように、尻尾でパタパタと畳を叩く。

シロは寝る姿を見せない。

こうやって一緒にゴロゴロしていると、猫だの人だのとの違いは無い気がしてくる。

庭で桜の木が揺さ振られている。

風が強い日。猫と俺が昼寝をしている。

春である。

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春眠 暁をおぼえず

2006/03/18(土)

リボルバーがズシリと重く残された朝に黒光りしてる
それなりの事情で誰もが死に物狂いで撃鉄をあげる
背中の向うでは苦々しく新しい風が吹いてる
そして瞼の裏では笑ってるママが俺の胸をジンジン締め付けている

蠍座の火群が激しく何光年もの銀河を貫く
撃ち抜かれた邪さの蜂蜜みたいに溶ろける調べは
異臭を放ってる理想郷の中素っ頓狂に響いてる
神無月の下で乾いてる影は過去と未来のコンチェルトに悩んでる

ふらふらと北へ揺られて紫色の目映い午後に「ココから先が険しいんだよ」と偶然聖者が右肩を叩く
俺の理想は果てしなく疾風の如く鼓動を置き去り
けち臭い重力くらって磔にされて総て悟るのさ

そして陽はまた昇る

千夜一夜の夢

そらまた世界市民が我が物顔で産声をあげた
全てはプロメテウスの仕業と諦観させるベタベタな
ジャムの様にまとわりつく大気の中で路傍の石が保証人さ
指の隙間を擦り抜けていった紙切れごときで自由と不自由がアスファルトにひれ伏した

ガラガラの天国の門で七日七晩頭を捻らしライムを並べりゃチャイムを鳴らされ見当違いの夕暮れが迫り
大手を振って歩けないなら行く当てだって見当たらないのか?
けち臭い重力くらって磔にされるままになすがままに期限切れか

そして陽はまた昇る

千夜一夜の夢

されど陽はまた昇る

千夜一夜の夢

またもや深みに填まった愛の無いロマンチスト達
呼吸を止めればたちまちゲーム終了の街角に立って
赤い血など通わない根も葉も無い噂話に目もくらむ
鼻先三寸見せ付ける正直さと云う諸刃の剣をボロボロに錆付かせ

ガタガタの体の奥ではマグマの名残が煮えたぎっている
馬鹿馬鹿しい程入り組み合ってるジグソーパズルの雨の中君は
「今すぐこの場で引き裂いて」と泣き
塵芥引換券出し
けち臭い重力無視して宇宙の歴史とワルツで一盛り

そして陽はまた昇る

千夜一夜の夢

されど陽はまた昇る

たかが一夜の夢

今夜その時未来を記憶して
パラノイア・シンドローム・シンジゲートは集って唄う

千夜一夜の夢

千夜一夜の夢

そして陽はまた昇る

千夜一夜の夢

されど陽はまた昇る

千夜一夜の夢


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やめてけぇ_れ、ズビズバッ!

2006/03/17(金)

春の夜の嵐が呼び込む一幕。


うまいバソが喰いてぇって言うから、ノガミへ行っただよ。そしたらケバいチャンネーが「ちょっと坊や」って手招きするからついていっただよ。
魔がさしたんだよ、オイラ。のこのこと暗い路地に入ったら、チンパのチャンニーが出てきただよ。
オイラ、即座にヤバいと思って「バイならっ!」って言って走りだしたんだよ。
幸いチンパのチャンニーがダルサンだったもんで、なんとか振り切っただよ。

散々走ったもんで喉っぷしがきゅうきゅうに乾いたもんだから、無性にラーコが飲みたくてキョロキョロしてみたら、右手にメンラーの暖簾が見えただよ。
ほいだら思い出したように腹っぷしまできゅうきゅう鳴りだす始末で、バソが喰いてぇかったんだがメンラーも似たようなもんだし、プクイチつくのにゃ丁度良いってんで店に入っただ。
さて腹っぷしも膨れたし、夜には重公が自称ツンベで迎えに来るしで家路につく事にしただ。
そしたら、ふと気付いただ! 松の野郎がいねぇだよ。うまいバソが喰いてぇって言ってた本人がいねぇだ。
考えてみたらチンパのチャンニーからズラかる時にゃ、もう姿はなかっただし、もっと考えるとチャンネーが声かけてきた時もいなかっただ。
あの豆泥野郎、ドコではぐれたんだか見当が全くつかねぇだ。
捜し回るのも面倒だし、約束の時間もあるしでオイラ帰る事にしただ。
松の野郎も子供ぢゃないし、ノガミ辺りで迷子なるけぇ_と駅に向ったら、道の向こうに松の姿が見えただよ。しかもさっきのチャンネーが一緒にいるだよ!
松の野郎、さっきのチャンネーと仲良くマイアミへ入っていくだな。
あんにゃ朗は元武闘派だし、昔は円寺辺りでブイブイいわせてたってんだから、余程の事が無い限り大丈夫だと思うだが……店に入るきわに振り向いて目配せしやがった気がしただ。

オイラ、暫くその場でタンベ噴かしたり、耳っぽかっぽじったりしながら「何だんべ……?」とハチを捻ってみたんだが皆目分からねえんで、店さ入ってみる事にしただよ。
入ってみると松の野郎の姿はなく、カウンター越しにチャンネーが誰かと揉めていやがるんだよ。オイラ近いてみると「アラ、お久ぶりね」なんて言ってチャンネーがコップをよこしてルービー注いでくれただな。
オイラからっきし呑めねぇだが、チャンネーが試すような目で薄笑いまで浮かべてやがるもんだから、ここで引いたら男が廃るってなもんで、グイッと一気に流し込んで味が分からねぇ内に胃っぷくろに入れっちまえってなもんで軽く足踏みしただよ。
なにが楽しいんだか、チャンネーがクスクス笑いながら「まぁご立派」なんて手を叩くもんだから、オイラもその気になって少し顎を上げながら鼻で大きく息吸い込んだだ。
するってぇと、カウンター越しに揉めてやがった田子作野郎が「兄ちゃん、アンタの血は何色だい?」なんて頭の悪い犬を諭すように聞きやがるだよ。
「久里浜に沈む夕日のようにまっかっかよ!」って鼻っさき近付けて一息に浴びせてやったら「……へ、へ、へへへ」なんて乾いた木の皮を剥くような声をドス黒いツラしてもらしただ。

どうもココは居心地がよかねぇや。

どいつもこいつも間抜け面して、肚の探り合いしながらテメェのココロを別のショバで泳がせてやがる奴ばかりだ。

その時だよ。ドーン! ドーン! と花火が上がる様な音がして、店中にただならぬ轟音が響きだしただね。
奥の方で七、八人の野良犬野郎どもがガチャガチャと演奏を始めただな。
真ん中には松の野郎があらゆる色のライトを浴びて、ぴかぴかと汗を光らせながら、噛り付くように歌っていただな。

「How does it feel? How does it feel__」

あちこちから犬だの猫だのが、わんさか集まってきて吠えたり、とびついたり、噛み付いたり、引っ掻いたりして、ありゃぁ_正気の沙汰ぢゃねえだな。よくよく見たら、どいつもこいつも似たような顔していやがるし、よっく聞いたら人間の言葉にとても近い言語を使いやがっただな。

「さぁ、気持ち良くやっちゃえよ」

「働け! 働け!」

「平気で嘘ついて、上辺だけで愛想まいてよぉ。出来るだろ!」

「さぁ、はっきりさせようぢゃないか」


恐ろしいのは時計の長針は五分と変わらない。
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Walking Blues

2006/03/16(木)

折角、スプロケとチェーンを載せ変えたと云うのに、今度はクラッチがくたびれてきたらしい。
そういう面倒臭さも楽しみの内だわね。
給料日まで我慢しておくれ。俺も我慢するからよ!

アクセルと一緒に五感を開くと前方に土くれを発見。
この土くれが表すもの。それは始まりの証だ。
道の真ん中にゴロリと転がるソレは、ある一面が滑らかに切り取られている。
程よい春の陽を受けて、土くれは艶々と黒光りしていた。

誰かがトラクターで畑をうなった後に、ここで落していったに違いない。

ガキの頃、この時期から夏が始まるまで、農家のダチとつるむには一緒に畑を手伝って、捗らせた後に連れ出す他なかった。
子供の手では大した助けにはならないが、農家ぢゃ一家総出の大事業だ。例外は無い。

うねって、種を蒔いてとする内に、今度はたんぼが始まって一気に活気づくのが春なのさ。

イップも、ポキ彦も今ぢゃすっかり主戦力になっただろう。もしかしたら自分の子供達に、手取り足取り教えて笑っているかも知れない。

五分の一世紀。人がかわり、町がかわり、世代がかわる。
しかし根っこの部分は簡単には変わりはしない。

それは経験を唄い、森羅万象を唄い、生きてる事を唄う『Blues』だ!

とんがったり、ゆるかったりと変化自在な鼓動と云う《Beat》にのって、土くれから人へ、人から人へ、記憶と歴史を連れ添って唄われてゆく。

ミシシッピー川もコットンフィールズも無いけれど、土くれがあって、空があって、人が生きていて月が出るのはココも同じだ。

もしかすると、俺に喫煙を伝授したベンバは Muddy Waters の化身だったのかも知れない。

俺も Old Country Boyさ!
 歩いてゆくぜ。

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何にも無い大地に唯風がふいてた

2006/03/12(日)

あれはカムチャッカ半島だったはず。
その火山が爆発すると、溶岩流が総ての生命を絶ってしまうのだ。

ある一瞬間が世界を零にしてしまう。

ところが、ところが、ところが、熱を鎮めた溶岩石の群落に、根をはる植物もあるのだという。ススキの仲間で、そんな強者がいるのだ。
ススキの寿命は2_3週間だが、根を張っては腐り、根を張っては腐りする内に、溶岩石の上に腐葉土を産み出す。そしてその腐葉土に今度はポプラが根をはる。ポプラの寿命は三十年。そのポプラが根を張っては腐り、根を張っては腐りして、溶岩流が絶ってしまった生命をまた呼び戻すのだという。百年位で土ができて、森ができて、川が流れて動物や昆虫達が行き来するようになる。

生まれては死に、生まれては死んで、生命の輪を拡げてゆく。

火山が癇癪を起こすと、また次の百年が待っている。


合理的でお手軽だと云うモノは、百年たてば次の合理的でお手軽なモノに代わってゆくだけだろう。まぁ、それも百年、二百年この世にいられれば分かるのだが、生憎そういう訳には誰もいかない。

手塚治虫さんの漫画でもそんな話があったっけ。あれは『火の鳥』だったかな?

雨風が吹き出した夜のプラットホームで「ススキくらいにはなりてぇな」と思った。
火の鳥の様な光を放ちながら、列車が闇を切り裂いて消えていったその後で。
  1. 山川草木
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クラムボンが笑ったよ。

2006/03/11(土)

なぜ、その時そこにあったのか? 兎に各、ドキッ! としたのは間違いない。
俺は盗むように拾い上げ、脳裏に焼き付けるが如く見入ったのさ。
一人の子は振り向きながら笑っている。もう一人の子はすましていた。

なんだろうか……? 去来するものが心臓も肺臓も押し退け、胸の内がパンパンになった。
この手の中にある一瞬間よりも、今のこの瞬間を捕らえたいのだが……。

それは彷徨う古の亡霊のように。

雪原に我がもの顔で残る、兎の足跡のように。

それは確かと不確かの間に浮かぶ霧の浮き船の様に『空気に混ざった』。


君はコーヒーゼリーを一匙掬い、ロウソクの灯にかざしたね。

月面に浮かぶ影が、女の人の泣き顔にみえると言ったね。

色紙と空き箱で作った夢の城。その扉の鍵は使うことも無く、汚れちまった悲しみと引き替えに〇〇〇へ流してしまった。

君は今更「運命」を信じる? 信じない? 一過性のモノと恒久的なモノ。そのどちらが俺と君を左右すると思いますか? 

馬鹿馬鹿しいな。

勝手に、信用されてるものだと……信用してくれるものだと思っていました。

『愛』って呼べる程のもんじゃないけど……。
俺は俺の、ある部分を封じ込めなくてはなるまいな。

……と思ったが、やっぱし止めた!
そう云う道理ぢゃ納得出来ないのさ! 俺様は!
何が何でも、笑って笑って笑ってやるんだ!
だからお前も、笑って笑って笑ってみせろ!
そして、あの鍵を見つけて扉を開けるトコロから始めよう。

―― otm chilへ。愛を込めて


明け方の月のように この窓から消えてくれ
陽の光が差し込めば 用無しって云う訳さ

君が探す太陽の化身って誰なのさ?
迷子になってる眼差しが幻を見たのかも?

俺ぢゃないとは散々言っただろう
嵐の中で君の扉を開き 迎えてやれるのは


同じ星の下だけど 風向きは違うのさ
アテが外れたみたいだと 踵は知ってるぜ

口にすれば何だって 嘘に聞こえるし
誰かの為に死ぬなんて とんだ茶番だろう?

俺ぢゃないとは散々言っただろう
君の声が響く そんな空を教えてやれるのは


君はハカナイ夜の城 石ころ同然さ 
死んだように動かない 勿論 俺には意味がない

お前の涙の理由まで集めてられないぜ!
永久に色付く花なんて何処に咲くんだよ!

お前の言葉は何かの呪文のよう
俺ぢゃないよ 君の物語で踊ってみせるのは


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  1. 山川草木
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天は人の上に人を創らず

2006/03/10(金)

きっかけは「日本海が見たい」だった。
何時だって思い立ったら吉日。その時腰を上げなければ、次の機会なんて中々つくれやしないのさ。

東京から新潟まで一体どの位の距離があるのかを考えもしなかった。ただ線路図を眺めて、電車で日本海まで行ける事を確認しただけで、俺とジョニーは飛び乗ったのさ。
俺達の計画は、山梨、長野経由で日本アルプスをかわし新潟へ。柏崎まで行けば日本海まで近そうだ。

問題は二人合わせても所持金が六百円しか無い事だが……時すでに遅し、すでに中央本線に乗り換えて、さっき甲府を過ぎたところ。
今、考えると無計画すぎて恐ろしい……。
ジョニー、まさかお前まで入場券で乗車していて、しかも小銭しか持っていないとわな……。
そんな心配とは裏腹に、電車はぐんぐんと進みヒスイ峠を越えてゆく。
ここは『峠の釜飯』が有名なところで、俺達以外の乗客が一斉に釜飯を買っていく。
釜飯は一つ六百円。これを買ったら、一円玉と五円玉と十円玉が少々残るだけだぜ! 指をくわえて見る他あるまい。な、ジョニーボーイ。
車両の中は釜飯のうまそうな臭いで、食堂車の様相に早変わりした。

「チクショウ。食べてぇなぁ_。あのウズラの卵だけでもいいから、誰かくんねぇかなぁ」

……止めなさいよ、ジョニー君。なんかグチると余計に切ないぜ。
次にここまで来る時は、千円以上は持ってこよう。俺達は固く誓い合い、必死になって食い気を押し殺した。

そして電車は横川駅へ滑り込む。どうやらここで特急と連絡するらしい。勿論、特急券など無い我々は乗り継ぎ出来ません。俺達以外の全員が、松本行きに乗り換えた。乗ってきた電車は回送車となり、来た方向へ戻って行く。
八月のピンぼけしそうな陽の光が、白っぽく照り返すホームにジョニーと俺だけが取り残されたか……。鈍行が来るまで一時間以上あるよ。

「誰か天麩羅でも揚げてんのか!」ついそう思わせる位、蝉の鳴き声が大気を満たしている。
この辺りは盆地なのね。四方をぐるりと山が囲っている。ホームから然程遠くない場所に学校があるが、夏休みで人の気配は無い。そしてホームにも人の気配は無い。
強い日差しと蝉の声で、俺達がいまにもカリカリに揚げられてしまいそうだ。

――悪気はなかったんだ……。

二人は何かこの熱さに魂が吸い取られたかの様に、無言のまま並んで山の方を眺めていた。

「あぁ、やっぱりこの辺まで来ると野性の猿がいるんだな」
「ちっ! 嘘だぁ_」
「本当だよ。あそこにいるぢゃん」
「えぇ_どこ、どこ?」
「分かんねぇか。あそこだよ」


「あっ! 本当だ」


いや、あの……本当はいないんだけど、まさかそう返すとは思わなかったから、嘘だって言えなくなっちまったよ、ジョニーボーイ。
後日談だが、彼はその後暫らく山間に猿の姿を探し続けたらしい。

そうこうする間に電車が到着。そう、まだまだ日本海までの旅は続くのだ。

つづく。
  1. 山川草木
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Let It RocK

2006/03/08(水)

The Rolling Stones
――「好きなバンドは何ですか?」と訪ねられたら、迷わずこの名をあげますね。

しかしこの方達、俺が生まれる前から現在まで、40年以上も現役でロックしてるのだから凄いわなぁ。
いやいや、「凄いわなぁ」が好きな理由では無いですよ。当然、かっこいいから好きなんです。
好きになる理由なんて、そんなもんでしょ。男も女もね。

もうすぐ来日する事だし、勝手にストーンズ論で盛り上がるぜ、俺! では……。

好きな曲ベスト3
1.Jumpin' Jack Flash
2.Honky Tonk Women
3.Tumbling Dice

あたりまえと言えば当り前の3曲ですが、特に1の格好良さときたら比べられるモノがありませんな。必要以上にブーミーな低音リフをかい潜って歌うミックの声のイヤラしさがたまりません。
この曲をモノラルスピーカーで聴くと、50年代のブルースサウンドに驚く程近い。合ってんだか、合ってないんだか分からない微妙なノリで、ねじ伏せるようにエンディングまでゴリ押しで進むあたりはさすがです。ライブバージョンもご機嫌だけど、やはりスタジオ盤は奇跡の一発でしょ。

好きなアルバムベスト3
1.Beggers Banquet
2.Exile On Main St.
3.Love You Live

1も2も余すとこ無くバンドの魅力満載。1はラフな手触りとは裏腹に、練り上げて作り込んである。俺の中では、全てのロックアルバム・ランキングNo.1。2は、その時のバンドのノリを十分に注ぎ、唯一無二のグルーヴサウンドで纏めた傑作。そして3は、このダラシなさ、このいい加減さ、コレでいいのか? コレでいいのだ! の必殺ライブ盤。エル・モカンボサイドの4曲が、これまた最高! 良くも悪くもエグみが一番ある時期の名演です。

キース・ベスト3
1.Happy
2.Comming Down Again
3.Little T&A

1は必殺のイントロから喧騒感炸裂! それに続く歌詞は全くの意味不明だが、どのバースも最後は「ハッピーな愛が欲しい」と収束されるキース度120%の曲。この曲があるが故、ジョンやディランよりもキースが好き。自らが弾くスライドも朴訥としてるが味がある。曲も歌詞も演奏もキースだけに許されたスタイルなのが痺れるぜ! ドクロ指輪とテレキャスぶら下げても、誰もああはなれないんだよな。

番外編:ストーンズと一緒に演奏する夢を何度か見た事があるが、どこかの大きな納屋で演奏した「無情の世界」は圧巻だった。
おしっこチビるかと思ったぜ。
絶対にありえないが、なにかの間違いで実現でもしたら確実にチビるな。

――と云う訳で、ストーンズ話を綴ったらいくら書いても限りが無いので今回はここまで。

しかし「RARITIES」のジャケのミック・ジャガーが歌っている姿は、まるでケン坊だよ。びっくりする程似てるぜ!

Can't Give You Up!!
  1. 山川草木
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アイツの頭はアイウエオ

2006/03/05(日)

あたりまえの事だが、猫と会話は出来ません。
それは分かっているのだが、思わず話かけてしまう。
彼らも何だか知らないが、うったえかけたり、ねだったりするように鳴く。
不思議と波長が合っていると錯覚させる時もある。

ご機嫌だったり、不機嫌だったりするのはお互い様だ!
立場がはっきりしている分、喧嘩になる事は無い。
サングラスを壊されちゃったが、しょうがねぇな……。

兎に各、彼らの事を書くとしても、憶測で補正するのはしょうがないだろ? 御了承下さい。


――新宿から西へ、橙色の電車で揺られて十五分。木造モルタル二階建の築30年アパート。建物は玄関から裏口までが東西に伸びていて、北側に各部屋の入り口がある。上下合わせて12部屋の内の一室を借りていた俺。
六畳一間に半畳の台所と入り口がオマケの様についている。
大家さんは都電しか無い頃に、この地に嫁に来たと云う婆ちゃん。
俺が住み初めて、二年目位に婆ちゃんは一人ぼっちになっちまった。

ある日「寂しいから……」と言って婆ちゃんは銀毛の子猫を貰ってきた。
何時も婆ちゃんの後をチョコチョコついて歩く彼の名は「テル」
俺の記憶では、テルは婆ちゃん以外には馴つかなかった。声をかけても逃げてゆくばかりだし、魚肉ソーセージを何度か窓から放ってやったが、食べることは無かった。

この大家さんの婆ちゃんがとっても良い人だったので、アレよアレよと何度もそのアパートで年越しをした。
その内、婆ちゃんは入退院を繰り返す様になる。癌だったのだ……。
お見舞いに行こうとしたが、身内の方が「宜しく伝えるので遠慮して欲しい」と言うので行かなかった。

あの婆ちゃんには本当にお世話になった。あの二十代の度を越えた俺と、あの頃の仲間を邪険にする事なく応援してくれたっけ。
ありえないよ、あんな大家さんは。

婆ちゃんの通夜の日、すかんぴんだった俺は哲ちゃんに香典代を借りて出席したが、通夜の席に知り合いがいる筈も無く、むしろ「誰だろ、この人?」と云う雰囲気の中で、焼香してそそくさと部屋へ戻った。
部屋の窓から月が綺麗に見えていたっけ。

その時だ! ガタガタッと音がしたと思ったら、窓の所にテルがいて中を覗いているぢゃないか。
そしてテルは網戸を開けて入ってくる。俺は初めてテルに触れる事ができた。

「お前、わかるのか?」

何も答えないテル。
撫でている右手越しに小さな鼓動を感じながら「わかるんだなぁ……」と勝手に納得する俺。


そしてその日を境にして、テルは日課の様に訪ねて来る事になる。昼となく夜となく。
窓を自分で開けて、俺が居ても居なくても。

こうして俺とテルの奇妙な関係が始まったのだが……。

憶えているかなぁ_アイツ。
  1. 山川草木
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調べはアマリリス

2006/03/03(金)

どうやら人間に憧れてしまったと云う話だよ。
ほら、猿真似とは言い得て妙だね。サイズだって合うわけないのに、何が楽しいのやら皆目見当がつかないね。

あっちの端からこっちの端まで、タントンタントンタントンタン。

ボックが何だか別の物みたいさ。タンタントンタントンタンタン。

白けてるのがいるね。赤ぬけてるのもいるよ。黄ばんでいるのは僕らに似てるかな。つやつや黒いのはイカしてるだろ?

知らない内が華だって? 君は随分、立派だな。けれどこの音色に心地良さを感じてはいるんだろ?
タントンタントンタントントン。

知らないが故の、無限の可能性が脈打つ音さ。
タントンタントンタントントン。



――その夜遅く、西の山から手足が長く色目を光らせた三匹が下りてきた。
「マコトのコトワリ。救いの道はソレしかない」
長らしい隻眼が言い切った。まだ夜明けは遠い。深まる闇、また闇。灌木が寒さで立ち割れる音が方々から聞こえてくる。
「今、必要なモノは力だろうか? それとも理解だろうか?」
誰もが這う様に歩いてゆく。飢えと寒さが容赦なく彼らをひれ伏させようと執拗に覆いかぶさる中を。

歩かなければ……。夜明けはまだ遠いのだ。

夜明けはまだ遠いのだ。




――間違っているなんて野暮な事言うなよ。もう少し夢心地でいようぢゃないか。タントンタントンタントントン。

並べたり競べたり量ったりする前に、コッチの端からコッチの端まで、渡って確かめてごらん。タントンタントンタントントン。

渡って確かめてごらん。そしたらゆっくり陽の当たる場所で、君の話も聞こうぢゃないか。タントンタントンタントントン。

タントンタントンタントントン。
  1. 山川草木
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地獄の季節ぢゃあるまいし

2006/03/02(木)

その混合体は一見すると腐食不透明だが、好んで食べる奴がいるトコロを考えると、余程虚飾を重ね合わせて呼吸器から五臓六腑、果ては右脳左脳まで二進法の甘い蜜で麻痺させちまうのだろう。

五つのWは「光陰矢の如し」軽々しくも生死を弄び、芸術家だの革新派だのの宴の後始末に生き甲斐を感じている木瓜茄子達が道を塞ぐ。

経過や結果を細かく細かく記録して、一億何万の薄気味悪い一方通行至上主義症候群が、他人の畑を荒らしながら大挙する紅蓮の道だ。

獅子と土神と狼の子供。峰の向こうに閃く銀河。その下でオリオンの調べにのって、牙を光らせ狙っている。
「もはや修復なぞしようとは思わない。骨も皮もしゃぶり尽くして、塵芥涙の河に反吐してやる」

醜くおぞましいモノを宿しながら、ひたすら断絶、断絶、断絶。その夜もその朝も捕まえようとさえせずに、ドコか妄想に近い無味無臭の平面な世界になら、真実を見出だせるとでも言うのかい?

はっきり言おう。答えは 「ノー」だ!


ソコにもドコにも何もありゃしない。この筋の最初から終わりが来る迄、奇声を上げ、触れる全てを叩いてみても「虚しさ」だけが雷を引き連れ降りしきるだけ。

そして、こんな御託も全て無駄。無駄。燃えないゴミ。言葉だの、文字など、カラクリ次第で如何様にも誤魔化せるお手軽な錬金術。

体を動かし、筋肉を使って細胞たちに呼吸させよう。
心拍数を上げ、血流を感じ思考の全てを飛び越えよう。


俺がこの目で見た車椅子の少年は、ピノキオとおじいさんの絵を何枚も何枚も描いていた。
小さな人形を並べ、絵具の力を借りて「生」を産み出そうと、幾日も画架の前を陣取ったに違いない。
俺は君の名前さえ知らないが、君の「愛」の欠片に「ひびき」を見た。

「ありがとう。さようなら」

「生きる」事は容易いが「生きてる」事は容易くは無い。
  1. 山川草木
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唄い出すのさぁ、舟歌を_

2006/03/01(水)

朝から冷たい雨が降っていた。やはりこんな日の昼食は温かいモノが食べたい。
辿り着いた店はカウンターが5席、座敷が3つとレーザーカラオケ。所謂、昼はお食事処、夜はカラオケ飲み屋なんだろう。
年齢不詳のはっちゃけ女将が、勢いだけの会話を投げてくる。

「みそらーめん」

間違いなくそう言ったはずなのに「何にするの?」と返された。

「みそらーめん」

再度チャレンジ。だって今日のおすすめの黒板に書いてあるもの、みそらーめんって!

「だめよ、おやつぢゃないんだから。お腹減っちゃうよ」

「いや。寒いからみそらーめんで良いよ」

そんなやりとりが二度程続き、面倒臭くなった俺は焼肉定食へ譲歩。意気揚揚と作りだす女将。ちなみに焼肉定食は今日のおすすめ黒板には書いてありゃしない。

そこへ推定60過ぎのおっちゃんが現れた。

「熱燗」

女将は相変わらず、勢いだけの会話を投げながら、燗徳利をつくる。

おっちゃんはどこかの商店帽に、鼠色セーターとスラックスを簡素に身につけ、やや潰れたわかばをちびちび吹かしている。

女将とおっちゃんと俺と岡野さん。店内はテレビもラジオも流れてはいない。なんとなく無言……。
外は冷たい雨。昼時だが他に客はこない。

燗が上がってお猪口と一緒におっちゃんの前に並ぶ。
おっちゃんは口元につける前に少し間をとり、そっと飲んだ。そして……

「酒は永遠の恋人だ……」

噛み締める様に呟いた。
痺れるねぇ_おっちゃん!
なんとなく、その一言で午後の仕事も乗り切れそうさ!
ありがとよ。

そして焼肉定食は不味かったが、見逃してやるぜ女将。

あぁ、人生劇場。
  1. 山川草木
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