今日も今日とてエンジンに火を入れて、俺とオートバイの対話はぎこちなかったり、スムーズだったり。
駅の東口へ抜ける高架を走らせると最近建ったばかりのショッピングモールが夜の中に光々とオレンジ色で浮かび上がっていて、なんだかこの土地には不釣り合いな要塞みたいで不気味なんだが、
その真上あたりに見える下弦の月と相まってオートバイからの眺めとしたら上々ぢゃねえか。
駅前から港町へ。そのまま外周をゆっくりと流してゆけば、水面と真っ暗な闇と俺はスピードの中で穏やかな一体感に包まれてゆく。
「めんどくせぇ!」
俺の口癖と思考癖はとっくのとうに遥か後方へと追いやられた。
ほんでもってバーチカルツインの心音が何処までも俺を楽しませてくれんのさ。
益々コイツに逆上せちまった俺は、「White Fang」と云う名をくれてやった!
早く太陽の下を走らせたい。
Come go with me,
学園線を東へ走らせながら、エンジンとタイヤが温まったところで四千回転より上を回してみる。
うむ。トルクフルだ。
東雲の交差点を右折して西大通りに入ると、一般車が多いのでおのずとタラタラ流すしかない。
こうなると車体がやたら重く感じるぜ。正直ダルいよ。
354をアンダーパスで越えたら綺麗に一般車の姿がなくなった。
おまけに建物が放つ灯りも極端に減ったりするから、頭上に星明かりがばらまかれて気分は上々。
俺はここぞとばかりにアクセルを開けて、俺にまとわりつく雑事やしがらみをぶっちぎるわけさ。
道は大きく左右にうねりながら夜の果てに続いてゆくみたいだ。
夜が夜としてあって、闇は闇として広がってゆく寒気の中、この身に感じるスピードと寒さだけが現実で、あとは嘯いた喜劇の一幕なのさ。
思考がこの辺まで来ると体感温度は零度に近い。
「オートバイなんてモノは人に言われて乗るもんぢゃない!」

俺の新しい翼。
お互いにまだ遠慮は隠せない。
ここから新しい時間が始まって、同時に何かを失って、つまり100%な満足感など得ることなく陽が暮れて眠りにつく。
マックイーンやイーストウッドに憧れちゃみるが、土台へなちょこボンクラである事を思い知らせて静かに眠るしかない。
ただ、悪あがきはしたいわけさ。
精神修業が足りないだけかもだけどな。